税理士事務所の選び方(労働時間編)
税理士事務所を選ぶ際に、是非考慮してほしいポイントは、その税理士事務所の毎日の労働時間です。 毎日の労働時間?と思われた方も多いかと思います。
労働時間が長い方が真面目な事務所だから信頼できるんじゃないかなと思われた方もいらっしゃるかと思います。
同業者の立場から言わせていただきますと、それは大きな間違いです。
なぜ間違いかといいますと、労働時間が長い事務所は、次のようなケースの可能性が高いからです。
労働時間の長い税理士事務所で想定されるケース
①事務所自体がブラック企業化しており、従業員に不満が溜まっている。
定時がAM9時からPM5時までの会計事務所を通常のケースとします。
この場合毎日PM9時頃まで働くことが常態化しているような事務所ですと、単純計算で1日4時間の残業時間が発生していることになり、一月の残業時間は、90時間近く発生していることになります。
ここで、月給20万円・残業代2,000円/時間くらいの従業員をモデルにすると、単純計算で1か月の残業時間は180,000円位になることが想定されますが、この業界では所長の税理士先生の力が強いため、額面通りに残業代が払われているケースは稀である事が多いです。
本来貰えるべき残業代180,000円が実際は60,000円くらいしか貰えないとなると、従業員はその税理士事務所で働くことに強い不満を抱くことになります。
ただし、所長税理士の力が強いため、真っ向から戦う勇気のある従業員は、皆無に等しいです。そうなると、従業員の不満がどこに向かうかといいますと、最終的に仕事の手抜きという形で現れるのです。従業員の心の中を表すと「残業代ももらってないのに、真剣に働くのはバカらしい」となるパターンが多いのです。その結果、最終的にサービスの質が低下し、お客様が不利益を被るということになりがちです。
②疲れがたまることから、勉強時間を捻出する余裕がない
毎日夜9時まで働いていると通勤時間を1時間夕食時間を1時間とすると、それだけで夜11時となります。その後お風呂に入り少しばかりテレビを見たりしているとそれだけで12時となります。12時から勉強しようという気は、よっぽど向上心のある人でないと出てこないでしょう。
税法というのは、毎年改正が行われるため、常に勉強を行うことが必須なのですが、毎日残業が状態化すると平日に勉強する時間をとることは、かなり難しいと言わざるを得ません。
ここで、比較していただきたいのは残業時間がゼロの税理士事務所です。先ほどのケースに比べ1日4時間の時間が浮くことになりますので、そのうち半分を勉強時間に充てたとすると、1日2時間平日の1週間で10時間を勉強時間にあてることができます。
年間で考えるとその差は500時間にはなります。これが何年も続くと考えると恐ろしいほどの勉強量の差になり、引いてはお客さんへのサービスの質の差となって表れるのです。
③一人当たりの作業量が多すぎる
残業が状態化しているということは、従業員一人当たりの担当顧客が多いということを意味しています。そのため、従業員に疲労が溜まり、仕事中の集中力を欠くことから、ミスが発生する確率が高くなります。
また、残業がない事務所に比べ残業が常態化している事務所では、残業に伴い残業代や光熱費等が余分にかかってくることになります。となると同じ売上高であっても、利益額が少なくなるということを意味しています。
そのため、従業員数を同じままで残業がない事務所と同額の利益を得ようとすると、お客様に価格を転嫁するか、人件費をカットするために残業代をカットするか、お客様1社あたりにかける時間を圧縮して、残業時間を減らすというような方策しかとれなくなります。いずれのケースにせよ、お客様に不利益が及ぶのは明白です。
ポイント
以上あげたようなケースが残業が常態化している事務所には見られるケースが多いため、残業が常態化している事務所は避ける方が賢明です。
そのため、毎日税理士事務所の前を通り、毎日のように夜9時まで明かりがついているというような事務所の場合は要注意してください。
その税理士事務所の所長先生と面談する際に事務所の中を除き、従業員に明らかに疲労がたまってそうな場合には、契約するのを躊躇した方が賢明かもしれません。
なお、常態化というのは私の中の基準では2週間程連続してという意味でしようしていますので、ご留意ください。