税理士事務所の選び方(価格編)

 顧問税理士を選ぶ際に当然気になるのが価格だと思います。

税理士をただの記帳代行屋として利用したいと考えられている方や確定申告書に税理士の署名さえ貰えればそれで構わないという方であれば、最も値段の安い税理士事務所を選べばよいと思います。

しかしながら、一定水準以上のサービス(節税や経営のアドバイス)を期待して税理士を選ばれる方は安さを重視しすぎないように注意して下さい。

ではなぜ安さを重視しすぎるといけないのか?

税理士も事務所を経営していかなければならないので、当然売上をあげていかなければならないのですが、税理士事務所の売上も普通の会社と同じように平均単価×数量つまり

      売上高=平均顧客単価×顧問先数

という算式に基づいて売上高が決定されます。そのため、売上高を増やすためには、平均顧客単価を上げる顧問先数を増やすという2つの戦略のどちらかを取る又は両方を追求していくしかありません。

 ここで注意していただきたいのが税理士報酬が極端に安い税理士事務所です。

先ほど税理士事務所の売上は売上高=平均顧客単価×顧問先数で決まると説明しましたが、税理士報酬が極端に安い事務所というのは、標準的な価格設定をしている事務所に比べて、同じ売上高をあげようとすると、売上高の掛け算の計算式に当てはめると、どうしても顧問先数を増やすしかないということになります。
そして事務員又は税理士に払う給料はどの事務所でも大きな差はありません。

 そのため、税理士報酬が安すぎる事務所というのは、物理的に事務員又は税理士が担当する一人当たりの顧問先数を増やさざるを得ません。

 実際の計算はもっと複雑ですが簡単に言うと、全く同じ条件の会社に対する報酬が5,000円と設定している事務所は、報酬が月30,000円と設定している事務所の6倍の数のお客さんを担当しなければ事務所経営が成り立たないということです。(金額は例なので月30,000円が標準という意味ではありません。税理士事務所の報酬は売上高など様々な条件で変動していきます)

 つまり報酬が安い事務所は、報酬が標準的な事務所に比べて客様1件当たりに対応する時間が6分の1しかないということです。

お客様1件当たりに対応する時間が6分の1しかないということは、当然その分サービスの質は低下するということになります。

具体的には以下のようなサービスの質の低下が考えられます。

  1. 作業を全てパートの事務員に丸投げして、税理士の先生はほとんど関与しない
  2. 一人当たりに過度の顧問先を担当させているため、時間が足りずミスが多発する
  3. 一人当たりに過度の顧問先を担当させているため、従業員が疲弊しており、常に時間に追われているため、顧客対応が横柄になる
  4. 一人あたりに過度の顧問先を担当させているため、質問をしても回答がくるのが遅い
  5. 所長の先生と面談しようとしても、顧客数が多すぎてアポイントが取れない
    上記の例はあくまで一部であり、他にも様々なサービスの低下が考えられます。

もちろん事務所の経費削減努力等で少しはカバーできますが、人間に与えられた時間はだれでも1日24時間という制約がある以上限界があります。

 ハンバーガーのファストフード店のサービスと一流ホテルのレストランのサービスを比較していただければご理解いただけると思います。

ファストフード店は価格は安いですが、食事の提供はセルフサービスであり、店内もピカピカとは言えない店が多いと思います。またサービスもスマイルぐらいしかないと思います(笑)。

これが一流ホテルになると内装は綺麗で、きめ細やかなサービスを受けられます。税理士事務所もこれと同じように考えていただければいいと思います。(最近は一流ホテルでもメニューの偽装問題もありますが(笑)、それでも素材の品質はファストフード店よりよいです)

すなわちサービス内容と値段はある程度比例しているということです。

 税理士事務所は国家資格を持っている税理士がやっているので、どこも同じだろうと思っている方もいらっしゃると思います。

しかしながら、サービス内容は税理士によって大きく異なってきます。そのため、手厚いサービスを期待して税理士を選ばれる方は価格を重視しすぎないようにして下さい。

 また、激安を売りにしている事務所の中には、毎月の顧問料は安いが、ちょっとした業務を依頼しただけで追加料金を請求されたり、当初の顧問料は安かったが1年程たった後、強引に高額なプランの方に変更させられたりして、結局は高くついてしまう所も存在します。

 そのため、ある程度のサービスも期待されている方は、価格だけで事務所を選ぶのでなく、税理士との相性等を総合的に判断した上で税理士事務所を選ぶことをお勧めします。