その節税対策は本当に節税になっていますか?
この記事は税金を減らすことだけを目的とした法人の取引について記載していますので、そのことを踏まえた上で記事を読んでいただければ幸いです。
以前取引先の社長からこんな話をされました。
銀行員が来て「交際費を使って利益を圧縮して節税対策をしましょう」と言われました。
私は今時こんな事を提案してくる銀行員がいるのかと驚きましたが、今期は利益がたくさん出そうなので交際費をたくさん使って節税を行おうと思っている経営者の方はいませんでしょうか。
確かに交際費を使うと支払う法人税等は少なくなりますが、こういった経営をしていますといつまで経っても会社の財務内容は良くなっていきません。
簡単に言うと会社にお金が貯まっていかないのです。
(ここで極端な例を挙げて説明させていただきます。)
・交際費を使う前の利益を1,000万円、法人税等の実効税率を30%、税金を減らすため300万円を交際費として使うとします。
その結果交際費を使った場合と使わなかった場合を比べると、下記のようになります。
①交際費を使わない場合(単位:万円) | ②交際費を使う場合(単位:万円) |
交際費控除前利益 1,000 | 交際費控除前利益 1,000 |
交際費 0 | 交際費 300 |
税引前利益 1,000 | 税引前利益 700 |
法人税等 300 | 法人税等 210 |
最終利益 700 | 最終利益 490 |
上記の通り法人税等は①のケースが300万円に対して②のケースは210万と90万円減少しており、一見節税になっているように思えます。
しかしながらここで見ていただきたいのが最終の税引後利益です。
700万から490万円に減少している事がわかるかと思います。交際費を使うと会社からお金が出ていきますので、最終的に会社に残るお金が少なくなってしまうのです。
手元に残るお金が700万から490万円に減少しているのに交際費をたくさん使って税金を減らすという行為を節税と言っていいのでしょうか?
私の個人的な意見ですが、これは節税とは言わないと思います。
誤解していただきたくないのですが、私は何も交際費を使ってはいけないと言っているのではなくて、取引先を増やしたり取引額を増やしてもらうような事に繋がらないようなただの浪費を、節税と称してやりすぎると会社にお金が残りませんよと言っているだけなのです。
これは何年も前にベストセラーになった中古のベンツを買って一括で経費にするという方法を使っても全く同じことです。(これについては、賢い社長が「3年10ヵ月落ちのベンツ」に乗る理由という記事に対する私見というページでさらに詳しく私見を記載させていただいております)
専門的な話になるので詳しくは書きませんが、一括で経費にしたとしても会計上の帳簿価格が1円になっているので、そのベンツを売却する際に売却価格に対して税金がかかってきます。(また車はフェラーリなどの一部の例外を除いて、購入時より確実に価値が下がっています)。
その時に税金を支払いたくないとなれば、また同じように売却額と同額以上の車を購入して、売却益と経費をぶつけて相殺することになります。
そのため税金を払いたくがないために、延々と中古の高級車に乗り換え続けるというサイクルが発生してしまいます。
簡単に言うと税金の支払を将来に繰り延べているだけなのです。
さらに高級車の場合、維持費も通常の車より高くなってよりキャッシュが会社から流出してしまいます。(よく中古車節税の話を解説しているユーチューバーやホームページがありますが、維持費まで考慮して話をしている人は本当に少ないです)
ですので会社の規模に応じたレベルの車を購入するのはいいと思いますが、税金を減らすという事だけを目的に身の丈以上の車を購入すると、将来会社の景気が悪くなった時に資金が苦しくなってしまいますし、そういう事例も実際に見てきました。
また今の世の中お金を使ってただ支払う税金を減らしているだけなのに、それを自社の商品を売りたいがために節税になりますよーと甘い言葉で勧めてくる業者がたくさんいます。
経営者の皆様はその取引が本当に節税になっているのかどうか、最終的に会社にお金はどのくらい残るのか、その取引は本当に会社の成長のために必要なのかという観点を意識して取引していただければなと思います。